home

ホーム

menu
メニュー

link
リンク

雑誌でも紹介
案内図を拡大
雑司ヶ谷霊園
旧宣教師館

室井滋さんも感激!
(VOICE2005年2月号より)




「インドの鬼女神・カリティ様に感謝!」

 面白いお店を見つけた。
 ひっそりとした住宅街にポツンとあるが、何だかキラキラ光ってる。
 喫茶店でもないし……ラーメン屋さんでもなさそう。……一体、何!?と思ったら、カレー屋さんなのでありました。
 最初、友人のA子と雨やどりのつもりで、ほんの30分だけ、お邪魔した。
「あー、カレー屋さんなのね。それも、本場っぽーい。……でも、ごめんなさい、お昼もうすませちゃったんで、お茶だけでもいいですか?」
 ランチカレーを食べている人々をチラチラ見回して、コソコソ遠慮がちに言ってみると、「もちろん、どうぞー」とお店の女性から、やさしい笑顔が返ってきた。
 そして私達は各々、ローズミルクとマンゴラッシーをお願いし、のどをうるおしたのだが……。もう、それらのジュースのおいしいこと、おいしいこと!
 時間もないくせに、私はたまらなくなって、メニューを見直してしまう。
「やだ、また食べるのー?」
 と、びっくり顔のA子。
「違う、違う、見るだけよ。見るだけ」
 と、ちょっぴり赤くなってしまう、私。
 サモサ、パコダ、カパプ、と品々をチェックしていちうち、ここがどうやら、外国人のコックさんのいる本格派インド料理店だということがわかった。
 それにしても、こぢんまりした店内はとても清潔で、楽しげ。ほのかに漂う香辛料の香りが、何とも落ち着かせてくれるのだ。
「うーん、窓の外は雨の雑司ヶ谷、やけに静かで田舎っぽいし、中はインドで、超くつろぎまくりよね」
 みるみるお気に入りになってニコニコしだすA子。彼女が棚などに置かれたアジアの小物を眺めているうちに、ふと、その視線を止めてまた言った。
「あれ……何?」
 彼女の目は壁の『占』とマークされた貼り紙をとらえていた。
「やだー、ここ、占いもやってくれるみたいよ。ひょっとして、サイババ系とかかしら」
 A子は占いが大好きなのだ。
 彼女はもう、ストローをくわえたまま、貼り紙の凝視してしまっている。
「ほれ、もう時間ないからさッ」
 A子がそのまま動かなくなる気配を察知し、今度は私が彼女の腕をとって、慌てだしたのであった。

 そして数日後――。
 その日の話を事務所のスタッフにしたところ、ヤンヤヤンヤの大騒ぎになってしまった。
「一応、予約制みたいで、占いの先生がお店の地下で、ひっそり占ってくれるらしいのよ。あとね、靴……ほれ、履く靴よ、『オリジナルを作ります』って書いてある。見本写真集も店内にあってね。それも近くに住むデザイナーさんが、そのお店に来て、足のサイズとか見てくれるみたいなのよ。ちょっと変わってっけど、私の勘じゃあ、カレーはかなりのもんだと思ったね……」
 持ち帰ったチラシを片手に、私が力説するが早いか、デスクのタミちゃんが、すぐさま3人分の占いの予約と、3人分のディナーの予約を入れてしまった。
 そして、そのさらに3日後、私達は都電荒川線雑司ヶ谷駅から徒歩1分のところのインド料理店『ベルガルカフェ』に繰り出したというわけなのだ。
 まずは、私が少し早めにやって来て占ってもらい、時間差で、タミちゃんとマネージャーのカネコも来店し、占ってもらった。
 占いはインドのものではなかったが、中国算命学、ダウジング、ルーンストーン、風水などとバラエティーにとんでおり、ドキドキ胸ときめいて楽しませてもらった。
「どうだった?……ウフフ、どうよー」
 などと、私達はお互いをチラチラさぐ合ったが、皆、そこは口に固くチャック。
 同じ事務所の仲間といえど、各人のプライバシー、まして未来の展望は秘密事項なのだ。
「また、今度、ゆっくり教えっからさー」などと、全員、含み笑いしながら、インドビール『キングフィッシャー』で乾杯したものなのだ。
「さあさ、こっからは、ディナーだからね」
 さて、私がお願いしまーすと声を掛けると、厨房に入っておられたご主人のプラディップ・クマル・サハさんが、いよいよ腕によりをかけたお料理を、次々と選んでくださった。
 ビールのおつまみに、インドの前菜、サモサやパパド、アローチョップ。そしてオリンタルサラダ、チキンとササミのカパブ、魚とエビのインド風炒めと続き、さらにはインド風トムヤムクンも追加した。
 時にピリッと刺激的、時に甘辛く、さらには辛いくせにやさしいニュアンスも……。とっても素晴らしいバランスで、それらは私達の下を魅了してくれるのだった。
 仕上げにチキンと、豆と、野菜の3種のカレーをターメリックを入れて炊いたライスと、焼きたてのホカホカのナンでいただき、私達のお腹とハートは、思いっきり満たされていくのであった。

 この店のご主人ブラディップさんは、バングラデシュ出身、カルカッタ育ちのナイスガイだ。
 日本の女性嫁さんにもらって、まずは一九九九年に、今の前進となるお店を鬼子母神にOPENさせた。
 お店は大人気で、この10月には池袋にも新しいお店『ラージ・ラニ』ができたところ。
 独特のインド家庭料理……お母さんの味が人気の秘密のようだ。
 それにしても、出店にあたってなぜ、あえてこの辺だったのかと、場所選びがなんとなく気になって、私はブラディップさんに聞いてみた。
 すると、彼の顔がスッと引き締まって、急にその背すじを正してから、静かに話してくれるのだ。「私の神様、ヒンズーの神様ですね。日本、来たけど、私の神様、ここにはいないって思ってました。でも、ある日、私の息子がちょっと病気になったね。私の奥さん、心配してお参りに行ったよ。どこ行きましたかー? それは、鬼子母神だったよ。息子、病気、治ったね。私もお礼言いたくて、奥さんに鬼子母神へ連れてってもらったよ。そしたら、びっくりしたねー。OHー!!ここに、私の神様いるよーって! 私の神様。カリティです。私、もう助かったって思ったね。だから、いいこといっぱい。このお店集まってくるお客さんも、ステキな人ばっかりよ。私、本当に感謝してます。神様にも、皆さんにも」
 私はブラディップさんの話を聞いて、大きく頷いた。
 たしかに、都電荒川線『鬼子母神前』におわす鬼子母神様は、インドの鬼女神『訶梨帝(カリティ)』と聞く。
 安産、子育ての鬼神として有名で、駅前から広がる参道のケヤキ並木が素晴らしく、私も早稲田に住んでいた頃は、よく散歩に出掛けたものだ。
 このお店に、そんな秘話があったのかと感動して、私はブラディップさんの顔を見つめ直したものである。
 今宵、こんなハッピー占いやカレーディナーとめぐり逢えたのも、ひょっとしたらカリティ様のお導きだったかも……。
 私達も改めてブラディップさんの神様に感謝し、それからまた、デザートをいただいてしまったのでありました。
「本当に今夜も、ウマウマをありがとう!」

「室井滋のうまうまノート」(VOICE2005年2月号より)


※お店は今は隣の雑司ヶ谷駅近くに引っ越しました。

OPEN 7DAYS A WEEK 11:30〜23:30
地図をクリックすると拡大します

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3丁目24-17 OKビル(都電荒川線雑司ヶ谷駅徒歩1分)

3-24-17 MINAMI-IKEBUKURO, TOSHIMA-KU, TOKYO 171-0022 JAPAN

TEL.03 - 3971 - 8677